UV印刷の概要
紫外線で印刷インキを乾燥させる研究は、割と昔から行われていて、1940年代から続けられていたようです。ただ、当時は紫外線の発光出力も小さく、硬化素材も限定されていたため、実用に至りませんでした。1960年代に入ると硬化素材も安定的に生産されるようになり、紫外線の発光出力も大きくなっていったため、実用段階に入っていきます。
1973年、石油ショック以降、印刷インキの乾燥のために大量のエネルギーを使用して熱乾燥させる従来の方式が、省資源・省エネルギーの観点から見直しを図られることになります。 また、印刷インキに含まれる溶剤類や有害物質が、大気汚染・水質汚濁あるいは災害防止の観点から厳しい制限が課せられることになりました。
そうした時代背景から、乾燥に熱エネルギーを使用せず、かつ無溶剤性のインキを使用するUV印刷システムが実用化しました。その後UVインキの原料、光開始材、印刷機への照射機の組み込み、UVインキに適応力のあるゴムローラー、耐刷性のあるPS版、易接着性の原反などの研究開発が進み、UV印刷システムが総合的に進歩して今日に至っています。
従来の油性インキに比較して、作業効率・環境保護・印刷物の諸物性などの優れた面が注目されるようになり、様々な印刷分野で急速に普及してきています。今後もUV印刷システムはさらに普及していくものと予想されています。その中でもパッケージ印刷においては特にその特徴が生かされるものとされています。
従来の印刷とは何が違うのか
印刷の仕組み自体は、従来のオフセット印刷と同じです。ただしUV印刷の場合は、専用のインキを使用するため、主にインキ回りの機材(刷版・ローラー等)は専用の物を使っています。
最も異なる点は瞬間硬化(いわゆる乾燥)です。従来の印刷方式では印刷が終わってから後工程(表面加工や打抜など)に至るまでに、最低でも12時間を乾燥のために費やしていました。UV印刷では印刷が終わり、UV硬化装置から出てきたときにはすでに硬化(乾燥)しています。硬化時間は1秒未満です。瞬間硬化になることによって、今まで裏移り防止用に使用していたパウダーも必要としなくなり、よってパウダーに起因する印刷のトラブルもなくなります。
UV印刷のメリット
- 1. 瞬間硬化のため裏づきの心配がなく、スプレーパウダーを必要としない。
- ポリラミ紙やアルミフォイル紙のような非吸収原反の印刷に適しています。
(飲料パック、冷凍食品、化粧箱品箱など) - 印刷物がザラザラしません。
- カビの発生が防げます。
- ポリラミ紙やアルミフォイル紙のような非吸収原反の印刷に適しています。
- 2. 瞬間硬化のため、印刷直後の製函などの後加工ができる。
- 印刷物を置いておくスペースが不要。
- 短納期に対応できます。
- 3. 油性インキに比べ皮膜の耐性が強い。
- 耐摩擦性が強く、重い内容物でも印刷が擦れづらい。
- 耐溶剤性が非常に強い。
- 4. 無溶剤のため臭気が少ない。
- 食品や薬のパッケージに適しています。
- 5. プラスチックフィルム印刷に適しています。
- 瞬間硬化のため、乾きにくい素材にも印刷が可能です。
- 耐摩擦性が強く、カード印刷に適しています。
※硬化性、各種耐性、臭気は使用するインキタイプ、
印刷条件(スピード、UVランプの強度)によって変化します。
どんな用途に利用されているか
UV印刷が採用されている分野としては、厚紙や複合材など主にパッケージに利用される板紙や、アルミホイル紙、ポリエチレンコート紙などの印刷に用いられます。もちろん普通の紙にも利用できますが、とりわけアルミホイル紙への普及率は高くなっています。これは印刷素材が非吸収性であるため、通常の印刷では難しいことと関係しています。ちなみにアルミホイル紙を使ったパッケージとしては化粧品などがありますが、化粧品のパッケージ印刷はほとんどがUV印刷で行われています。
また、ポリエチレンコート紙への印刷は冷凍食品のパッケージや、牛乳・ジュース等の容器に利用されています。UV印刷が選ばれる理由としては、従来の印刷と比べて、乾燥後の印刷皮膜の臭いが少ないこと挙げられます。
食品関係のパッケージでは特に無臭性は重視され、フレーバー性の高いチョコレートのパッケージはUV印刷で行われています。また物流の点からも、耐摩擦性が厳しく要求されるパッケージの印刷にもUVインキが選ばれています。